大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(特わ)1362号 判決

本店所在地

東京都世田谷区鎌田一丁目七番一号

株式会社依田建設

右代表者代表取締役

依田勝

本籍

東京都世田谷区鎌田一丁目七番

住居

同都同区岡本三丁目二七番一二号

会社役員

依田勝

昭和一八年九月二六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人蜂谷英夫各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社依田建設を罰金三〇〇〇万円に、被告人依田勝を懲役一年に処する。

被告人依田勝に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社依田建設(以下「被告会社」という)は、東京都世田谷区鎌田一丁目七番一号に本店を置き、鳶・土工工事に関する業務を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成四年一〇月二四日以前は四二〇万円、平成二年二月五日以前は一四〇万円)の株式会社であり、被告人依田勝(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注労務費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成元年九月一日から平成二年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇九三七万三二九〇円(別紙1の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成二年一〇月三一日、東京都世田谷区玉川二丁目一番七号所在の所轄玉川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一九六八万〇五五八円で、これに対する法人税額が六九三万八八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成六年押第一二九五号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四二八一万六〇〇〇円と右申告税額との差額三五八七万七二〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成二年九月一日から平成三年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五六六六万二九〇四円(別紙2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成三年一〇月三〇日、前記玉川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇二八万六四一七円で、これに対する法人税額が六七三万八九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五七八七万九九〇〇円と右申告税額との差額五一一四万一〇〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成三年九月一日から平成四年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九四七一万三九七九円(別紙3の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成四年一〇月三〇日、前記玉川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二七〇万九七一九円で、これに対する法人税額が七四万四三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三四七四万三一〇〇円と右申告税額との差額三三九九万八八〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書七通

一  山内こと館澤智、坂野信夫、大久保克仁、須藤豊秋、保坂博司、福井正温、島田十太郎及び依田慎悟の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、賃金給料(製造原価)調査書、外注労務費(製造原価)調査書、厚生費(製造原価)調査書、外注加工費(製造原価)調査書、旅費交通費(製造原価)調査書、交際費(製造原価)調査書、支払手数料(製造原価)調査書、労務管理費(製造原価)調査書、給料手当調査書、租税公課調査書、諸会費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費損金不算入額調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の「売上高」、「租税公課」、「雑収入」、「事業税認定損」、「水増売上等」及び「玉川税務署の所在地等」についての各捜査報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

判示第一及び第二の事実について

一  検察事務官作成の「賃金給料(製造原価)」、「支払手数料(製造原価)」及び「給与手当」についての各捜査報告書

判示第一の事実について

一  検察事務官作成の「受取利息」、「損金の額に算入した道府県民税利子割」及び「交際費損金不算入額」についての各捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(平成六年押第一二九五号の1)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(前同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の旅費交通費調査書、燃料費調査書、消耗品費調査書、事務用品費調査書、雑費調査書

一  押収してある法人税確定申告書等一袋(前同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(第一の事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)、二項(情状による)

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、法人税法一五九条一項

(第一の事実の罰金刑の寡額につき、前同)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、鳶・土工工事に関する業務を目的とする被告会社の社長であった被告人が、架空外注労務費を計上するなどして、三事業年度にわたり、合計一億二一〇〇万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率も通算約八九・三パーセントに達している。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任には軽視を許されないものがあるといわざるをえない。

他方、被告人は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件三事業年度分の法人税の本税を完納し、附帯税については分納中であること、被告会社は、弁護士及び税理士を顧問としてその指導に従うとともに、顧問税理士が紹介した経理担当者を入社させ、二度と同種事犯を犯さないように努めていること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金四〇〇〇万円、被告人・懲役一年)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

〈省略〉

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙4

ほ脱税額計算書

会社名 株式会社依田建設

(1) 自 平成元年9月1日

至 平成2年8月31日

〈省略〉

会社名 株式会社依田建設

(2) 自 平成2年9月1日

至 平成3年8月31日

〈省略〉

会社名 株式会社依田建設

(3) 自 平成3年9月1日

至 平成4年8月31日

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例